第6回 銀の森の会 平成23年4月19日(火)
産業廃棄物処理 −過去・現在・未来−

- 講師:ハチオウ組織活性化部 齊藤 光男
- 環境・廃棄物ビジネスは、今や約75兆円(2008年 環境省)もの市場規模を持ち、大手企業も参入するなど注目を集めています。環境意識の高まりもあり、廃棄物処理業は社会になくてはならない存在として認知されるようになりました。しかし一方で、負のイメージも残っています。1970年代から化学系廃棄物処理に取り組むハチオウの齊藤光男さんが、産業廃棄物処理業の歴史と、業界を取り巻く現在の状況などを語りました。
- インターネット普及が不法投棄の流れを変えた
産業廃棄物処理業という業界が誕生したのは、1970年代前半。全国各地で悪化する公害問題を受け、「公害国会」で廃棄物処理法が成立した1970年(昭和45年)以降のことです。飛躍的な経済成長のもと、大量生産、大量消費が続いた時代。各地で不法投棄が横行するなど、産業廃棄物が社会問題化していました。
昭和から平成に入っても不法投棄は続き、福島県いわき市で起きた「大谷総業事件」や香川県豊島の「豊島事件」など、大規模な不法投棄事件が起きました。この流れを変えるきっかけとなったのが、90年代後半のインターネットの普及です。多くの人が情報を発信する力を持ち、地方で起きている問題を全国に知らせることができるようになったからです。
2001年には従来の環境庁に旧厚生省の廃棄物処理行政を移管した「環境省」が生まれ、社会全体が環境問題に目を向けるようになりました。ISO14001が普及するなど、廃棄物に対する企業の見方が変わってきたのもこのころです。法令を遵守し、廃棄物を適正に処理しようという動きが、環境ビジネスの発展へとつながりました。
- 「トイレのない家」を想像してみてほしい
- 廃棄物処理がビジネスとして確立し、市場規模が拡大を続ける一方、処理施設が「迷惑施設」とみなされる点は変わりません。これは世界共通に見られ、「NIMBY(ニンビー)症候群」とも呼ばれます。NIMBYとは、"Not In My Back Yard"(うちの裏庭ではやらないで)の略。「必要なのは分かるけれど、どこか違う場所で」ということです。
処理施設が不足すると、不法投棄や放置、野焼きにつながります。すると、廃棄物処理に対するイメージがさらに悪くなり、住民の反発を招きます。新しい処理施設を作ることがますます困難になり、それが処理施設の不足につながり、次の不法処理を生む……という悪循環に陥ってしまうのです。
個人・零細業者から大手・上場企業まで、許可業者は5、6万社とも10万社とも言われているこの業界。行政側は悪質業者を淘汰し、優良業者を選別、育成していこうという政策を進めていますし、業界内部でも近代化を進め、情報を積極的に開示するなど、信頼を得るための努力をしています。
「迷惑施設」は家の中のトイレと同じ。トイレのない家を想像できるでしょうか。廃棄物処理施設の存在が、社会に安全・安心を提供していることを、ぜひ理解していただきたいと思います。
- 廃棄物処理業の将来を考えると、課題はまだ多い
- 最後に、これからの廃棄物処理を考える上での課題を2点、挙げておきます。
ひとつは、廃棄物処理業者は外注ができない、ということです。この問題は、製造業と比べるとよく分かります。メーカーは製品を作る際、自社の能力を越える部分を協力会社に発注することができます。ところが産業廃棄物処理業者は、自社の処理能力を越える部分を外部に発注することができません。不適切な処理を防ぐため、廃棄物処理法で禁止されているからです。
もうひとつは、化学系廃棄物を処理するときに感じる矛盾です。処理現場には、未開封の毒物や劇物が持ち込まれることがよくありますが、行政の指導により、これら新品の化学物質も適正に処理しなければなりません。新品を廃棄するのはもったいない、ということもありますが、純度100%のものをわざわざエネルギーをかけて処理することが果たして「適正な処理」と言えるのかどうか、疑問を感じます。
リデュース、リユース、リサイクル、という言葉がよく使われますが、廃棄物はまず発生を抑制すること(リデュース)が大切です。どうしても出てしまったものは再利用(リユース)やリサイクルの道を探り、その上で、廃棄せざるを得ない特殊なものだけを適正に処理する、という優先順位を確立してほしいものです。
